英国の名門オーディオブランド、Bowers & Wilkins(B&W)。その透き通るようなサウンドは、どのようにして生まれたのでしょうか。この記事では、B&Wの豊かな歴史を深く掘り下げていきます。すべては、創業者ジョン・バウワースの純粋な情熱から始まりました。彼の卓越したデザイン哲学は、アビーロード・スタジオで今も愛用される数々の名機を生み出す礎となります。この記事を読めば、アイコン的なNautilus誕生秘話から、フラッグシップの800シリーズや人気の600シリーズを含む歴代スピーカーの進化、そしてオーディオファンからの高い評価まで理解が可能です。さらに、現行モデル一覧や中古市場でのポイントも網羅し、B&Wの魅力を余すところなくお伝えします。
- 創業から現在に至るB&Wの歩みと哲学
- Nautilusや800シリーズなど歴代名機の技術革新
- 現行モデルのラインナップとそれぞれの特徴
- 中古市場を含めたB&Wスピーカーの評価と選び方
B&Wの歴史を築いた創業者と哲学

- 創業者ジョン・バウワースの情熱
- 妥協なき音を追求するデザイン哲学
- アビーロード・スタジオが認めた音質
- 技術革新を物語る歴代スピーカー
- 伝説のNautilus誕生秘話とは
創業者ジョン・バウワースの情熱

Bowers & Wilkinsの輝かしい歴史は、創業者であるジョン・バウワースの「原音に限りなく忠実な音を届けたい」という純粋で揺るぎない情熱から始まりました。第二次世界大戦中に通信兵として無線技術に深く関わった彼は、音響に対する探求心を育んでいきます。
戦後、彼は妻とともに英国南部の海辺の町ワージングで電気店を営む傍ら、店の裏にある作業場でスピーカーの組み立てと販売を始めました。これがB&Wの原点です。1966年には、B&W Electronics Ltd.を正式に設立。質素な生活を送りながら、事業で得た利益のほとんどを研究開発に再投資するという哲学を貫きました。
特に有名なエピソードとして、彼の店の顧客であったナイトという老婦人からの遺産贈与が挙げられます。彼女はクラシック音楽を愛し、バウワースが製作したスピーカーの音質に深く感銘を受けていました。そして、彼がより優れたスピーカーを開発できるよう、遺産として1万ポンドを遺したのです。この資金が、ブランド初の市販スピーカー「P1」を開発する大きな後押しとなりました。彼の「完璧であってもまだ足りない」という言葉は、今もなおB&Wの精神的支柱として受け継がれています。
妥協なき音を追求するデザイン哲学

B&Wのスピーカーに見られる独特のフォルムは、単に見た目の美しさを追求した結果ではありません。むしろ、最高の音質を実現するための機能性を突き詰めた結果として生まれた「機能美」に基づいています。これが、B&Wが長年貫いてきたデザイン哲学です。
スピーカーの理想は、ドライバーユニット(音を出す部分)だけが存在し、余計な音を発する筐体(キャビネット)が存在しない状態だと考えられます。そのため、B&Wのデザインは不要な振動や共振をいかにして排除し、ドライバーユニットが理想的に動作できる環境を作るか、という一点に集中しています。
例えば、800シリーズの最上位モデルに見られる、丸みを帯びた独立したヘッド部分(タービンヘッド)は、中音域ドライバーへの干渉を最小限に抑えるための形状です。また、内部の骨格構造である「マトリックス構造」は、キャビネットの剛性を極限まで高め、不要な響きを抑制します。素材へのこだわりも徹底しており、長年採用されてきた黄色いケブラーコーンや、最新のコンティニュアムコーン、そして究極の硬度を誇るダイヤモンド・ツイーターなど、すべてはより正確な音の再生のために選ばれたものです。このように、B&Wのデザインは、そのすべてに音響工学的な明確な理由が存在するのです。
アビーロード・スタジオが認めた音質

B&Wのスピーカーが持つ正確性と信頼性は、プロフェッショナルの世界で高く評価されています。その最も象徴的な例が、ザ・ビートルズをはじめとする数々の伝説的な録音を生み出してきた、世界で最も有名なレコーディングスタジオ「アビーロード・スタジオ」での採用です。
このパートナーシップは1980年代後半、B&Wのスピーカー「801」がスタジオのモニタースピーカーとして導入されたことから始まりました。モニタースピーカーとは、録音された音が意図通りに記録されているかを確認するための基準となる機材であり、極めて高い正確性が求められます。アーティストやエンジニアが作り上げた音を、何も足さず、何も引かずに再生する能力がB&Wに認められたのです。
以来、アビーロード・スタジオでは、モデルチェンジを経ながら現在に至るまで、B&Wのフラッグシップである800シリーズがリファレンスモニターとして使われ続けています。『スター・ウォーズ』や『ロード・オブ・ザ・リング』といった壮大な映画音楽のミキシングにも、B&Wのスピーカーが貢献しました。プロが音楽制作の最終判断を下すために使うスピーカーを、一般の家庭でも楽しめるという事実は、B&Wが持つ大きな魅力の一つと言えるでしょう。
技術革新を物語る歴代スピーカー

https://audio-heritage.jp/BandW/speaker/dm70.html
B&Wの歴史は、オーディオ界の常識を塗り替えてきた技術革新の歴史でもあります。その進化は、時代を画した歴代のスピーカー群によって雄弁に物語られています。
ブランド初の市販スピーカーである「P1」(1966年)から始まり、1970年には静電型とダイナミック型を組み合わせたユニークな「DM70」を発表しました。そして、1976年に登場した「DM6」は、その独特の形状から「妊娠したペンギン」という愛称で呼ばれ、今ではB&Wの象徴とも言える黄色いケブラーコーンをミッドレンジに初めて採用した記念碑的なモデルです。
1979年に発表された「801」は、その後の800シリーズの礎を築き、アビーロード・スタジオに採用されるなど、スタジオモニターとしての地位を確立しました。さらに1987年には、内部の補強構造によってキャビネットの共振を劇的に抑える「マトリックス構造」を導入した「Matrix 801」が登場し、スピーカー設計に新たな基準を打ち立てます。これらのモデルで培われた技術は、現在の製品にも脈々と受け継がれており、B&Wのスピーカーが常に進化し続ける原動力となっているのです。
伝説のNautilus誕生秘話とは

Bowers & Wilkinsの歴史を語る上で、決して外すことができないのが、1993年に発表されたスピーカー「Nautilus(ノーチラス)」の存在です。巻貝を彷彿とさせる、あまりにも斬新なその姿は、音響工学の常識を覆し、ブランドの探求心を世界に知らしめました。
Nautilusの開発は、創業者ジョン・バウワースの晩年に始まった「S.R.C.(Steyning Research Centre)」という極秘プロジェクトから生まれました。テーマは「もし、スピーカーの設計に何の制約もなかったら、どのようなものができるか」。この壮大な問いに対する答えがNautilusでした。開発の核心は、ドライバーユニットの後方に出る不要な音をいかにして消し去るか、という点にあります。通常、この背圧がキャビネット内部で反射し、音を濁らせる原因となります。
B&Wのエンジニアチームは、この問題を解決するために、ドライバーユニットの後方に先細りの長いチューブを取り付けるという画期的な手法を考案しました。このチューブ(ノーチラスチューブ)が、後方への音響エネルギーを内部で完全に吸収・減衰させ、振動板が理想的に動作することを可能にしたのです。5年もの歳月をかけて完成したNautilusは、商業的な成功以上に、B&Wの技術力を示す象徴となりました。そして、このノーチラスチューブの技術は、後の800シリーズをはじめとする多くの製品に応用され、B&Wサウンドの透明感を支える重要な基幹技術となっています。
B&Wの歴史を彩るスピーカーと評価

- フラッグシップモデル800シリーズ
- 高音質とデザインを両立した700シリーズ
- コスパに優れる人気の600シリーズ
- いまも語り継がれるB&Wの名機
- B&Wの現行モデル一覧と特徴
- B&Wのスピーカーと相性の良いアンプ
- オーディオファンからの高い評価
- 中古市場での人気と選び方のコツ
- B&Wの歴史を知り本物の音を体感
フラッグシップモデル800シリーズ

800シリーズは、B&Wが持つ最高の技術と哲学をすべて注ぎ込んだ、ブランドの顔とも言えるフラッグシップ・ラインナップです。前述の通り、アビーロード・スタジオでリファレンスモニターとして採用されていることからも、その性能の高さがうかがえます。
世代ごとの進化
1979年の初代「801」の登場以来、800シリーズは常にB&Wの技術革新をリードしてきました。Nautilusの技術を取り入れた「Nautilus 800シリーズ」、そして究極の振動板素材であるダイヤモンドをツイーターに採用した「800Dシリーズ」の登場は、ハイエンドオーディオの世界に衝撃を与えました。その後もD2、D3と進化を続け、最新のD4シリーズでは、これまで培ってきた技術をさらに洗練させ、音響性能を新たな高みへと引き上げています。
搭載されている主要技術
最新の800 Series Diamond (D4) には、B&Wの最先端技術が惜しみなく投入されています。
- ソリッドボディ・ツイーター・オン・トップ: アルミニウムの塊から削り出した筐体にダイヤモンド・ツイーターを格納し、共振を徹底的に排除します。
- コンティニュアムコーン・ミッドレンジ: 長年使用されたケブラーに代わる新素材で、より開放的でニュートラルな中音域を再生します。
- タービンヘッド: 中音域ドライバーを格納する独立したヘッドで、不要な干渉を防ぎます。
- エアロフォイル・コーン: コンピューターモデリングを駆使して開発された低音域用ウーファーで、軽量かつ高剛性を実現し、深みと切れのある低音を生み出します。
- リバースラップ・キャビネットとマトリックス: 極めて剛性の高いキャビネット構造が、不要な響きを抑制し、クリアなサウンドの土台となります。
もちろん、これだけの技術が投入されているため、価格が非常に高価である点は、多くの人にとってのデメリットと言えるかもしれません。しかし、それを補って余りある、圧倒的なサウンドパフォーマンスを提供してくれます。
高音質とデザインを両立した700シリーズ

最高峰である800シリーズの性能に迫りつつ、より多くのリスニングルームにフィットする現実的なサイズとデザインを両立させたのが、B&Wのラインナップの中核を担う700シリーズです。600シリーズからのステップアップを考える方や、本格的なホームシアターを構築したいユーザーから絶大な支持を集めています。
最新の700 S3シリーズの大きな特徴は、800 Series Diamondで採用されている数々の先進技術を、このクラスで初めて惜しみなく投入した点にあります。例えば、フロアスタンディング型の上位モデルには、アルミニウムの無垢材から削り出されたエンクロージャーにツイーターを格納する「ソリッドボディ・ツイーター・オン・トップ」を搭載。これにより、不要な共振から完全に切り離され、極めて開放的で精緻な高音域の再生を可能にしました。
また、中音域には透明感あふれるサウンドで定評のある「コンティニュアムコーン」を、専用のバイオミメティック・サスペンションでマウントしています。これは、従来のスパイダーダンパーに起因する不要な空気圧変動を劇的に低減し、中域の透明度をかつてないレベルにまで高める技術です。
デザイン面では、800シリーズよりもスリムなエンクロージャーを採用し、フロントバッフルが緩やかにカーブしているのが特徴です。このカーブは見た目の美しさだけでなく、音響的な回折現象を低減する効果も持っています。仕上げに新たに加わった「モカ」のカラーは、現代的なインテリアとも美しく調和します。
ブックシェルフ型からフロアスタンディング型、センタースピーカーまで豊富なラインナップが揃っており、ピュアオーディオから本格的なサラウンドシステムまで、多様なニーズに柔軟に応えることができる、まさに万能と呼べるシリーズです。
コスパに優れる人気の600シリーズ

すべてのオーディオファンが最高峰の800シリーズを手にできるわけではありません。そこで、B&Wの高品位なサウンドをより身近なものにするために存在するのが、高いコストパフォーマンスで人気の600シリーズです。
このシリーズの最大の魅力は、800シリーズなどの上位モデルで開発された革新的な技術を、巧みに取り入れている点にあります。例えば、最新の「600 S3シリーズ」では、長らく上位機種の特権であったコンティニュアムコーン・ミッドバスドライバーが採用されており、価格帯を超えるクリアで繊細なサウンドを実現しました。
ラインナップも、コンパクトなブックシェルフ型の「606 S3」や「607 S3」、そして迫力あるサウンドが楽しめるフロアスタンディング型の「603 S3」など、部屋の広さや聴く音楽のジャンル、予算に応じて選べる多様性を持っています。B&Wのサウンドに初めて触れる方にとって、まさに理想的な入門機と言えるでしょう。一方で、上位モデルと比較すると、音のスケール感や極めて微細な音の再現性においては譲る部分もありますが、その価格を考えれば十分に満足度の高いシリーズと考えられます。
いまも語り継がれるB&Wの名機

B&Wの長い歴史の中では、生産が完了した後も、その卓越した性能や独特の魅力によってオーディオファンに愛され、語り継がれる「名機」と呼ばれるモデルが数多く誕生しました。これらは中古市場でも人気が高く、今なお多くの人々を魅了し続けています。
代表的な名機の一つが「Matrix 801/802」です。画期的なマトリックス構造によって実現された、濁りのないクリアなサウンドと音楽的な響きのバランスは絶妙で、現代のスピーカーと比較しても色褪せない魅力を持っています。
また、「Nautilus 805」は、ブックシェルフ型というコンパクトなサイズにNautilusの技術思想を凝縮したモデルとして、世界中で大ヒットしました。日本の住環境にもマッチしやすく、B&Wの評価を不動のものにした傑作として知られています。
その他にも、ブランドの25周年や30周年を記念して作られた「Silver Signature」シリーズは、特別な素材や銀配線などを用いた贅沢な作りで、コレクターズアイテムとしても高い価値を持っています。これらの名機は、B&Wが単に新しいものを追い求めるだけでなく、時代を超えて愛される普遍的な価値を創造してきたことの証左です。
B&Wの現行モデル一覧と特徴
現在のB&Wは、伝統的なステレオ再生用のスピーカーだけでなく、現代の多様なライフスタイルに応える幅広い製品ラインナップを展開しています。ここでは、主要な現行モデルのシリーズとその特徴を表形式で紹介します。
シリーズ名 | 主な特徴 | ターゲットユーザー |
800 Series Diamond | ブランドの最高峰。最新技術を全て投入したリファレンスモデル | 究極の音質を求めるオーディオファイル |
700 Series | 800シリーズの技術を継承し、スリムなデザインを持つミドルクラス | 高音質とインテリアとの調和を両立したいユーザー |
600 Series | 高いコストパフォーマンスを実現したエントリーシリーズ | 初めて本格的なスピーカーを導入するユーザー |
Formation Suite | 独自のメッシュネットワークで高音質を実現するワイヤレスオーディオ | 利便性と音質を両立させたいモダンなライフスタイルのユーザー |
ヘッドホン (Px8など) | B&Wのサウンド哲学を凝縮したプレミアム・ワイヤレスヘッドホン | 外出先でも妥協のない高音質で音楽を楽しみたいユーザー |
カスタムインストール | 壁や天井に埋め込むことで、スピーカーの存在を感じさせない | インテリアデザインを最優先するホームシアターユーザー |
このように、ピュアオーディオの追求から、利便性の高いワイヤレスオーディオ、そしてパーソナルなリスニング体験まで、B&Wはあらゆる場面で最高の音響体験を提供するための製品を開発し続けています。
B&Wのスピーカーと相性の良いアンプ
B&Wのスピーカーは非常に高性能で、入力された信号を忠実に再現する能力に長けています。これは長所である一方、組み合わせるアンプの個性や実力をありのままに映し出すことにも繋がります。そのため、B&Wの真価を引き出すにはアンプ選びが非常に重要な鍵となります。ここでは、一般的にB&Wと相性が良いとされる代表的なアンプメーカーをいくつか紹介します。
定番で安心の組み合わせ「Rotel(ローテル)」

Rotelは、長年にわたりB&Wと同じグループ企業に属してきた背景があり、いわば公式パートナーとも言えるメーカーです。開発段階でB&Wのスピーカーをリファレンスとして使用することも多く、その相性の良さは折り紙付きです。サウンドの傾向としては、色付けが少なくストレートで、スピーカーを力強く駆動する能力に長けています。B&Wが持つ高い解像度や透明感を素直に引き出したい場合に、まず検討したい組み合わせと言えるでしょう。
音楽的な響きを加える「Marantz(マランツ)」

Rotelと同じく、B&Wと歴史的に深いつながりを持つのがMarantzです。Rotelがストレートな音調であるのに対し、Marantzは艶やかで広がりのある、音楽的な響きを持っているのが特徴です。特にB&Wの600シリーズや700シリーズと組み合わせることで、分析的になりすぎず、長時間リラックスして音楽に浸れる心地よいサウンドを奏でてくれます。クラシックやボーカルものを中心に聴く方から特に人気があります。
性能を極限まで引き出す「Accuphase(アキュフェーズ)」

日本のハイエンドオーディオを代表するAccuphaseは、B&Wのスピーカー、特に800シリーズのようなハイエンドモデルの性能を限界まで引き出す組み合わせとして定評があります。その特徴は、極めて精緻でパワフルな駆動力にあります。これにより、スピーカーを完璧にコントロールし、音の立ち上がりから消え際までの微細なニュアンスまで、克明に描き出します。B&Wの持つ解像度の高さを最大限に活かしたい場合に、最高の選択肢の一つとなります。

温かみと艶を添える「Luxman(ラックスマン)」

Accuphaseと並び称される日本の老舗Luxmanも、B&Wと相性の良いメーカーとして挙げられます。Accuphaseがモニターライクな正確さを追求する傾向にあるのに対し、Luxmanは暖かく、しなやかな音楽的表現力に定評があります。B&Wの持つクールでモニター的な側面に、人間的な温かみや音の艶を加えたいと考えるユーザーに最適な選択です。これにより、音楽の持つ情感がより豊かに表現されるようになります。
もちろん、ここで挙げた以外にも素晴らしいアンプメーカーは数多く存在します。最終的にはご自身の耳で聴き、好みの音を見つけることが最も大切です。機会があれば、ぜひ専門店などで実際に試聴してみることをお勧めします。
オーディオファンからの高い評価
Bowers & Wilkinsは、世界中のオーディオ専門誌や評論家、そして何よりも音楽を愛する一般のオーディオファンから、長年にわたり一貫して高い評価を獲得しています。その理由は、録音された音源を脚色なく正確に再生する「モニターライクな性能」と、音楽に浸る喜びを感じさせてくれる「音楽的な表現力」という、ともすれば相反する二つの要素を極めて高い次元で両立させている点にあると考えられます。
特に評価されるのは、ダイヤモンド・ツイーターがもたらす透明感と伸びやかさを感じる高音域、コンティニュアムコーンによる解像度が高く自然な中音域、そしてマトリックス構造などに支えられた歪みの少ないタイトな低音域です。これらの要素が組み合わさることで、クラシックからジャズ、ロック、ポップスまで、あらゆる音楽ジャンルを破綻なく鳴らしきるオールラウンドな性能を発揮します。
もちろん、人によっては、その正確さゆえに「音が硬質」「モニター的で冷たい」と感じる場合があるかもしれません。また、スピーカーの性能が高い分、組み合わせるアンプやプレーヤーの質が音に正直に反映されるため、オーディオシステム全体でのバランスを考える楽しみと難しさがあることも、B&Wの特徴の一つです。
中古市場での人気と選び方のコツ
B&Wのスピーカーは、その優れた基本性能と堅牢な作りから、中古市場でも非常に人気が高く、安定した価格で取引されています。生産が完了した過去の名機を手頃な価格で手に入れることができるのは、中古市場の大きな魅力です。
中古で人気のモデル
中古市場では、特に「Matrix 800シリーズ」や、初代の「Nautilus 800シリーズ」が根強い人気を誇ります。これらのモデルは、現行モデルとはまた違った音楽的な魅力を持つと評価されており、今なお多くのファンに支持されています。また、手頃な価格帯の「600シリーズ」の旧モデルも、これからオーディオを始める方にとって良い選択肢となります。
中古品を選ぶ際の注意点
魅力的な中古品ですが、購入時にはいくつか注意すべき点があります。
- ユニットの状態: 最も重要なのがスピーカーユニットです。特に金属製のツイーターはへこみやすいので、念入りに確認が必要です。ウーファーやミッドレンジのコーン紙に破れやシミがないかもチェックしましょう。
- エッジの状態: ウーファーユニットの周囲にあるゴムやウレタン製の「エッジ」は、経年劣化で硬化したり、ボロボロになったりすることがあります。交換には費用がかかるため、状態の良いものを選ぶのが賢明です。
- 外観と付属品: キャビネットに大きな傷や打痕がないか、また、サランネット(スピーカーの保護網)やジャンパーケーブルなどの付属品が揃っているかも確認しておきたいポイントです。
- 出音の確認: 可能であれば、実際に音を出して左右の音量バランスや音質に違和感がないか、ノイズが発生しないかを確認するのが最も確実です。
これらの点を踏まえ、できるだけ信頼のおけるオーディオ専門店で購入することが、後悔しないための鍵となります。
B&Wの歴史を知り本物の音を体感
- B&Wは1966年にジョン・バウワースが創業した英国のブランド
- 創業者の哲学は一貫して「原音に忠実な音」の追求
- 事業で得た利益は惜しみなく研究開発に再投資された
- 特徴的なデザインは音質を最優先する機能美に基づいている
- 世界的に有名なアビーロード・スタジオの公式モニタースピーカー
- 黄色いケブラーコーンをいち早くスピーカーに採用した歴史を持つ
- マトリックス構造はキャビネットの不要な共振を劇的に低減させた
- Nautilusはスピーカー設計の常識を覆したブランドの象徴
- Nautilusで開発されたチューブ技術は現行モデルにも応用されている
- 800シリーズはB&Wの技術を結集したフラッグシップモデル
- ダイヤモンド・ツイーターは比類なき透明感のある高域を実現する
- 600シリーズはB&Wサウンドへの優れた入門機として人気が高い
- 現在はワイヤレス製品やヘッドホンなど多様な製品を展開している
- 中古市場では生産完了後の歴代名機も根強い人気を誇る
- スピーカーの真価を引き出すには組み合わせるアンプ選びも鍵となる
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